| 中国四姑娘山自然保護区管理局の大川健三氏より今回の四川省大地震の現地リポートが入りました。
1.地震の状況
(1)震源地 5月12日14:30過ぎ、文川県南部を震源地にして大きな地震が起き、震源地周辺は強い揺れに拠る建物崩壊と山崩れで全滅状態になりました。また岷江流域で震源地南側の都江堰市や北側の北川地方等でも大きな被害が出ました。この状況についてはテレビで詳しく報じられています。
(2)四姑娘山の日隆
日隆は岷江西側の分水嶺で隔てられた震源地の西側60km位に位置しています。震源地が四姑娘山を挟んで隣接しているため日隆では大きな揺れが有り、石積み民家が半壊したり壁や石垣が崩れましたが死傷者は出ませんでした。また長坪溝や双橋溝の奥では氷河が崩れ雪崩や岩崩れが起き、川沿いや山の斜面では所々で小規模な地割れも起きました。しかし海子溝や長坪溝の本道では大きな被害が無いです。一方、枝谷では岩崩れで道が塞がったり唐松林が岩崩れでなぎ倒されたりしています。犀牛海子への道で土砂崩れが発生している可能性が有りますが問題なく通れるでしょう。羊満台のモレーン下で岩崩れが発生していると通れなくなる場合が有りますので、余震が治まった時点で調査する事にしています。双橋溝の道路は落石のために一部区間が不通になりましたが、近日中に開通するそうです。日隆の発電所は地震で壊れ修理に膨大が費用が掛かるため復旧に日数が掛かるそうで、臥龍経由で供給されていた文川県の電力も絶たれているため、長期間電気の無い生活が強いらるかも知れません。地震の後、日隆では雨が降ったり止んだりして更に地盤が緩み、時々大きな岩が落ちて来て谷間にこだましていましたが、15日になって晴れ落石は治まりました。当地の歴史書に拠ると、日隆では18世紀中期の金川戦役以後100数10年ぶりの大きな地震で誰も経験した事が無く、多くの村人が強い恐怖を感じています。
(3)四姑娘山の周辺
巴郎山の崖崩れや落石は小規模で短期間に復旧するそうですが、震源地に近い臥龍の区間で修理中の道路や橋の被害が深刻なようで電話も未だ繋がりません。
夾金山の崖崩れや落石も小規模で短期間で復旧するそうです。
日隆から小金へ行く途中30km位の場所で地盤が弱い急な崖が続いていて、この周辺で落石や崖崩れが集中して起きました。
地震が起きた時、折り悪く私は小型バンに乗ってこの場所を通っていて子供の頭位の大きさの落石の一つに直撃されましたが、運良く助手席の窓とその後ろの窓の間のフレームに当り怪我せずに済みました。
しかしこの時、近辺で2人の村人が落石のために亡くなったそうで、他の場所でも落石による死傷者が少し出たそうです。
なおこの落石や崖崩れは数が多かったものの一つ一つの規模が小さかったため、その日の内に道路は復旧しました。
今私が居る小金の町は日隆の東側50km位に有り、殆ど被害は出ていません。
小金よりも更に東側50km位に位置する丹巴県では山上の一部の民家で被害が少し有った程度です。 大渡河沿いの急な崖が続く道路では落石や崖崩れが起きましたが、殆ど復旧しています。
(4)余震
新しく出来た大きなダム周辺で起きた地震のため、ダムの水が断層に浸透し続けているらしく、日隆では小さいながらも未だに毎日数回の体感できる余震が続いています。
2.長坪村の被害と生活状況
半壊したり壁や石垣が崩れた民家の被害は地盤が弱い長坪村に集中しています。それも殆ど2階部分で、昔ながらの建築方法に弱さの問題が有るようです。つまり、1階は壁厚60cm位で丁寧に石を積みますが、2階は厚さが減り石の積み方が雑になる傾向が有ります。更に石を泥と小石で固めながら積んでいるため、大きく揺れた時に家の四隅に集中する応力に耐えられないようです。それに対して鉄筋コンクリートの柱を使った家は少しヒビが入った程度の被害で済んでいます。現在の四姑娘山の民家の建築基準では外壁を石積みにする事になっていて鉄筋コンクリートを使い辛いため、この建築基準を見直す必要が有りそうです。余震が治まらないため日隆、特に長坪村の人は壊れた家の整理もままならず、家の外でのテント生活を続けています。村の人は命が助かった事を喜び表情が比較的明るいですが、一方で家を修理するための資金に苦しんでおり、政府の援助を待っています。また学校は休みで子供達は家の仕事を手伝っています。電話回線は半日位だけ通じています。停電が続いておりガソリンも販売中止なので、村に1台だけ有る自家用発電機は一部の携帯電話の充電と少しだけテレビのニュースを見るためだけに使っています。ガソリンが無いタクシーが多く、丹巴でガソリンを買って来たり特別なコネでガソリンを入手した一部のタクシーだけが走っています。そのため料金は2倍になっています。食糧品店も閉まっていますが、村の人は小麦粉やジャガイモや乾し肉や漬物等を普段からストックしているので今の所困っていません。四姑娘山の村人が本気で心配している事は、今回の地震のために観光客が2〜3年来なくなって10年前の貧しい生活に戻るのではないかという事です。村人は今年も多くの人が四姑娘山を訪れてくれるよう願っています。
長坪村の様子を伝える写真です。
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| 地震が起きた翌朝、避難したテント場で不安な表情を見せる村人達。 |
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壊れた家の傍に建てられた小屋。 |
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| テレビを外へ持ち出し自家用発電機に繋いでニュースに見入る村人達。 |
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| 命が助かったので壊れた家の前で比較的明るい表情を見せる父娘と従姉妹達。 |
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付け足しの話ですが、地震のために四姑娘山で孤立した米国人旅行者2人が成都の米国領事館と連絡を取り、管理局の車で成都まで送られて行きました。昨年秋に米国人登山家が甘孜州で遭難した時も当地の政府の対応は丁寧で、今更ながら彼らが米国人である事を羨ましく思いました。なお私は重慶の日本大使館から安否確認だけの電話を受けました。
3.道路の復旧見込み
成都→臥龍ルートは完全に不通で復旧に2ヶ月位掛かるそうです。開通すれば路線バスで7時間です。成都→夾金山ルートも不通ですが、こちらは近日中に道路上の落石等を片付けて通れるそうで、それに合わせて路線バスも運行を始めるそうです。路線バスで10時間です。成都→丹巴ルートは大渡河沿いの崖道が落石で数日不通でしたが、今日から小型車やトラックが通っています。路線バスは未だ運行を見合わせています近日中に運行を再開するそうです。タクシーと路線バスを乗り継いで12時間です。
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