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「横から眺めた北京オリンピック」
 
「こんなこと、カメラの前では言えませんけど・・」
オリンピックの取材で一ヶ月ほど北京に滞在したが、その中で一番印象に残ったのがこの言葉だった。
国家の威信をかけたオリンピック。中国国民は皆、オリンピックは素晴らしい、中国発展のシンボルだ、と表向きでは言っているのだが、取材クルーがチャーターした車の運転手さんは「交通規制が多く、不都合なことが多い。あまり歓迎している人はいないのでは」
とぼやく。そんな話に続いたのが「カメラの前では・・・」という言葉だった。
 若者向けのバーやクラブでは、アメリカのヒップホップや最新のR&Bが大音量でかかり、観光客と中国の若者が音に合わせて体を揺らしていた。目の前にあるのは自由な雰囲気、規制のない風景なのだが、どこか違和感を覚えた。この中で、以前、天安門で多くの人が殺されたことを知っている若者がどれほどいるのか?
20代半ばの取材コーディネーターに天安門事件のことをたずねたが、「不満分子が起こした暴動」という認識だった。そこで、参考になると思いリチャードゴードン、カーマヒルトン監督のドキュメンタリー映画「天安門」を薦めたのだが、翌日、彼女から「パソコンが固まってしまいました」という話を聞いた。パソコンでその映画を検索したら、その直後から検索ができなくなってしまったというのだ。
他のベテランコーディネーターは国を批判するような内容に触れる調べ物に関しては、自宅ではやらず、出先の支局のパソコンを使って調べていた。彼らにしてみるとそのようなことは「当然のこと」なのだそうだ。
先の運転手さんに本音と建前について聞いてみると、気が許せる相手以外に、国や党に対する批判を話すことはないという。権力を持つものを批判し、そのことが権力者の耳に入ったとしたら、いいことはない・・。このような考え方が文化大革命を経験した人たちの間に染み付いているのだそうだ。

今の中国で、人々が自分の言いたいことを言い始めたら、それは大変なことになる。今の北京は金で物事が動き、ある程度の自由の中で人々は暮らしている。その生活の中にもたくさんの幸せがあるに違いないのだが、若者がその波の中に飲み込まれてしまうのは少しさびしい・・・。

熱い戦いが繰り広げられた北京で、人々を見ながらそんなことを考えた。

  
メインスタジアムにて
 
開閉会式総合演出の張芸謀と

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